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かわぐちかいじの漫画をはじめて読むなら、まずは『沈黙の艦隊』の1巻を開いてみましょう。ひとまずの目標は12巻です。舞台が東京湾から北極海へ移る区切りなので、全32巻を読み切るつもりで始めなくても大丈夫です。タイムスリップの話が好きなら『ジパング』、近い未来の日本の防衛を描いた話なら『空母いぶき』から入る手もあります。

夜明け前の海を望む窓辺の製図机に白い紙とコンパスが置かれ、海の底から音の波紋が広がっているイラスト

迷うのも無理はありません。『沈黙の艦隊』が全32巻、『ジパング』が全43巻、『太陽の黙示録』が2部で全26巻、『空母いぶき』が続編を合わせて全31巻です。この四つを足すだけで132冊になります。しかも2026年4月には『空母いぶき』の第3シーズンも始まりました。ここでは全部を追わず、入口を四つに絞ります。

この記事の読み方:ここで案内する順番は公式が定めたものではなく、はじめての人が迷わないように組んだものです。冊数はBOOK☆WALKERで配信中の電子版で、2026年11月6日の確認です。配信は変わることがあります。紙の版の巻数は、完結時の全巻数です。結末の中身は明かしませんが、『ジパング』の節だけは終盤の組み立てに少し触れます。読む前に知っておきたいこともあります。ここで挙げる長編の多くは戦闘と人の死を描き、核兵器やテロも扱います。『空母いぶき』には中国やロシアとの武力衝突が実在の国名のまま出てきますが、物語はフィクションです。『ジパング』には実在の軍人や政治家が登場し、拷問の場面や原爆の話もあります。『太陽の黙示録』は巨大地震で日本が分断される話で、民族の対立や暴力も描かれます。『生存 LifE』は娘を殺された父親の話で、自殺を考える場面から始まります。

はじめての人におすすめの読む順番

今の気分に近い入口を一つ選んでください。全部を順に追う必要はありません。

入口読むもの分量の目安こんな人に
潜水艦と国際政治沈黙の艦隊の1〜12巻12冊(全32冊)最初の一作を決めたい人
太平洋戦争の「もしも」ジパングの1〜8巻8冊(全43冊)タイムスリップの話が好きな人
近い未来の防衛空母いぶき→空母いぶき GREAT GAME13冊→18冊現代の艦隊戦を読みたい人
短く試す生存 LifE3冊長編の前に試したい人

迷ったら『沈黙の艦隊』をおすすめします。原子力潜水艦の艦長が独立国家を宣言する、という一行だけで先が気になりますし、海の上の戦いと各国の政治を同時に動かす書き方は、のちの『ジパング』や『空母いぶき』にも続いています。ここで合えば、ほかの長編にも入りやすいはずです。

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買う前に確かめたい、紛らわしい題名

かわぐち作品には、題名だけで判断すると間違えやすい本があります。先に四つ挙げておきます。

題名間違いやすい点
ジパング 深蒼海流『ジパング』の続編ではありません。源平合戦を題材にした別の物語(全23巻)で、『ジパング』との関連はありません。
太陽の黙示録 第2部 建国編電子書店では第1部と別のシリーズに分かれています。第1部の17巻のあとは、こちらの1巻へ進みます。
小説 映画 空母いぶき漫画ではなく小説です。著者は大石直紀さんで、小学館の文庫です。
黒い太陽かわぐちかいじに1972〜1974年の同名の連載がありますが、新堂冬樹さんの小説を笠原倫さんが漫画にした『黒い太陽』(全5巻)は別の作品です。

『沈黙の艦隊』は12巻を最初の目標に

『沈黙の艦隊』は、1988年から1996年まで『モーニング』に連載された作品です。日米が極秘に造った原子力潜水艦「シーバット」の艦長、海江田四郎が試験航海の途中で姿を消し、独立国家「やまと」を宣言します。全32巻もありますが、作中で流れる時間は2か月ほどとされます。一つの航海を、戦闘と外交の両面からじっくり追う物語だと思ってください。

注目のされ方も漫画の枠を超えていて、1990年5月29日の衆議院内閣委員会では、山口那津男議員が防衛庁長官にこの作品を読んだことがあるかと尋ねています。連載中にはソ連の崩壊や冷戦の終結が現実に起き、設定や物語にも影響しました。序盤にはソ連の原潜が出てきますが、後半の巻にはロシアの名が出てきます。

巻舞台と出来事読み方
1〜4巻「やまと」の独立宣言、第7艦隊の包囲網、沖縄沖のソ連原潜まずここから
5〜8巻沖縄沖で対峙する日米ソ、ハワイの日米首脳会談続けて読む
9〜12巻東京湾の戦い、海江田の東京上陸、移動浮きドック「サザンクロス」最初の目標
13〜15巻北極海の戦い、新型原潜「シーウルフ」潜水艦の戦いが好きなら
16〜17巻「やまと」保険の構想、日本の衆議院選挙政治の話が好きなら
18〜21巻ニューヨーク沖、米大西洋艦隊との戦い終盤の入口
22〜28巻全世界への生中継、世界の原潜の集結、ニューヨークへの前進題名の意味が明かされる
29〜32巻ニューヨーク入港と国連総会最後まで読む

13巻から先も一本の物語として続くので、12巻は完結ではなく区切りです。そこまで読んで続きが気になるなら、そのまま32巻まで進みましょう。戦闘より議論が好きな人は、後半ほど楽しめるはずです。

実写版から興味を持った人へ

実写シリーズは2023年の映画から始まりました。2024年にはその映画に未公開シーンと続きの話を足した配信ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1 〜東京湾大海戦〜』が、2025年には映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』が出ています。2026年3月には続編の制作が発表され、主演の大沢たかおさんは原作の最後まで撮ると語りました。9月には、シリーズの最新作となる配信ドラマ『沈黙の艦隊 目覚めよ、ニューヨーク』が2027年夏に配信されると発表されています。

ただし実写版は時代を2020年代に移し、「やまと」や登場人物の設定にも手を加えています。なので漫画も1巻から読むのがおすすめです。先を急ぐなら、東京湾の話は9〜12巻、北極海の話は13〜15巻、衆議院選挙の山場は16〜17巻にあたります。ニューヨーク沖の戦いは18巻からです。最新作は「やまと」がニューヨーク沖に着いたあとの話と発表されているので、備えて読むならこのあたりが目安です。

海江田の若い頃を描いたスピンオフ『瑠璃の波風』(全4冊)もあります。本編のあとに読むのが素直な順番だと思います。

同じ作品でも巻番号は版で違う

紙の本や合本版を買うときは、巻番号をそのまま当てはめないでください。たとえば『沈黙の艦隊』の12巻までは、電子の超合本版なら3冊です。

作品単行本と電子版超合本版(電子)ほかの版
沈黙の艦隊全32巻全8冊(4巻ずつ)講談社漫画文庫 全16巻、愛蔵版 全11巻、新装版 全16巻
ジパング全43巻全9冊(5巻ずつ、最後は3巻分)講談社漫画文庫 全22巻
太陽の黙示録第1部 全17巻、第2部 全9巻——
空母いぶき全13巻、GREAT GAME 全18巻——

BOOK☆WALKERの『沈黙の艦隊』の一覧には「35冊」と出ますが、これは1〜3巻の無料お試し版が別に数えられているためで、本編は32巻です。

『ジパング』は8巻まで読むと方向が見える

『ジパング』は、海上自衛隊のイージス艦「みらい」が1942年のミッドウェー海戦の海域へタイムスリップする物語です。2000年から2009年まで『モーニング』に連載され、全43巻あります。副長の角松が、死ぬはずだった海軍少佐の草加を救ったところから、歴史が変わり始めます。

巻舞台と出来事読み方
1〜8巻ミッドウェー、シンガポール、ガダルカナル、トラック諸島、満州まずここまで
9〜13巻アッツ・キスカの撤退、ヨーロッパの草加、濃縮ウラン物語が世界へ広がる
14〜25巻「みらい」乗員の分裂、インド洋、「みらい」奪還艦の中の対立を読む
26〜43巻マリアナの決戦、戦艦「大和」と原子爆弾、完結最後まで読む

2004年のテレビアニメ(全26話)は、原作の満州編の序盤で終わっています。アニメの続きを知りたい人は、草加が満州へ渡る7〜8巻のあたりが目安です。

終わり方も先に書いておきます。物語は完結していますが、作者が2002年に語っていた「戦後編」は、最終43巻の6話だけで描かれます。戦後の日本を長く読めると期待しすぎないほうが楽しめると思います。

『空母いぶき』は発表の順に読む

『空母いぶき』は、尖閣諸島をめぐる衝突をきっかけに、事実上の空母「いぶき」の艦隊が戦いに向かう物語です。惠谷治さんの原案協力を得たシリーズで、第1作は小学館漫画賞を受けています。2025年12月時点の累計部数は1050万部を超えました。続編と合わせて三つのシーズンがあり、発表の順に読むのがいちばん迷いません。

シリーズ舞台分量読み方
空母いぶき尖閣諸島と先島諸島、中国との戦い全13冊まずここから
空母いぶき GREAT GAME北極海で始まり、宗谷海峡と北海道へ。13巻からベーリング海へ全18冊13巻で舞台が変わる
空母いぶき CHOKEPOINT台湾と中国の諍いから始まる雑誌で連載中2026年4月に開始

『GREAT GAME』では、次の「いぶき」艦長候補として蕪木が登場し、物語の中心になります。前作の秋津も引き続き出てくるので、順番どおりに読むほうが人物の関係をつかみやすいでしょう。『CHOKEPOINT』は『ビッグコミック』の連載です。

2019年の映画『空母いぶき』を観た人は、別の物語だと思って開いてください。映画はストーリーがオリジナルで、相手も中国ではなく架空の「東亜連邦」に変えられています。

『太陽の黙示録』は第2部まで読む

『太陽の黙示録』は、巨大地震で日本列島が南北に分断されたあとを描く物語です。2002年から2010年まで『ビッグコミック』に連載され、小学館漫画賞と文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を受けました。

読み方の要点は二つです。一つ目は、序盤で物語が大きく飛ぶことです。2巻は震災から15年後で、4巻までは台湾の避難民の話が続きます。5巻から「日本編」が始まるので、ここまで読むと作品の広がりがつかめます。二つ目は、第1部「群雄編」の17巻で完結だと思わないことです。避難民が日本へ帰る話は、第2部「建国編」(全9巻)へ続きます。第2部の後半の舞台は2026年の日本列島で、ちょうど今年にあたります。

地震の場面から始まる作品なので、つらいと感じる人は無理に読まなくて大丈夫です。

短い作品、別の顔の作品

長編の前に試すなら『生存 LifE』(全3冊)です。原作は『賭博黙示録カイジ』の福本伸行さんで、余命半年を告げられた父親が、時効まで半年を残した娘の殺害事件の犯人を探します。時効の設定は連載当時のものなので、今の法律とは違うことだけ頭に置いてください。

軍事ものではない作品も読みたいなら、次の中から選べます。

作品分量どんな話か
僕はビートルズ全10冊原作は藤井哲夫さん。2010年のコピーバンドが1961年へタイムスリップします
アクター全14冊大衆演劇の女形が映画の主役に抜擢される話で、講談社漫画賞を受けた作品です
イーグル全11冊日系人の大統領候補と、取材する日本の新聞記者の物語です
メドゥーサ全12冊血のつながらない兄妹が、政治家と革命戦士に分かれて生きます
兵馬の旗全10冊惠谷治さんの協力で描かれた作品。幕軍の将校が主人公で、幕末の戦いから五稜郭へ向かいます
サガラ 〜Sの同素体〜全8冊原作は真刈信二さん。日本人警察官が主人公のスパイサスペンスです

短編も読むなら、『'86-'02 かわぐちかいじ全短編』という本があります。

読み終えたら、作品の根っこへ

かわぐちかいじは1948年に広島県で生まれ、1968年にデビューしたとされます。小学生のころは小澤さとるの潜水艦漫画『サブマリン707』に夢中で、『沈黙の艦隊』ではそのころ描きたかった潜水艦の絵を描けたといいます。漫画を描き始めたきっかけは、永島慎二の『漫画家残酷物語』でした。戦争を描いた漫画を別の作家で読み比べるなら、松本零士の戦場まんがシリーズも手がかりになります。

どの入口でも、最初に読むのは一冊だけで大丈夫です。今夜なら『沈黙の艦隊』の1巻を開いてみてください。試験航海に出た艦長が姿を消すところから、この長い航海は始まります。

参考(2026年11月6日確認)

  1. 国会会議録「第118回国会 衆議院 内閣委員会 1990年5月29日」 — https://kokkai.ndl.go.jp/txt/111804889X00719900529/75
  2. 映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』公式サイト STORY — https://silent-service.jp/story/
  3. シネマトゥデイ「実写『沈黙の艦隊』続編制作が決定!」 — https://www.cinematoday.jp/news/N0153950
  4. AV Watch「Prime Video「沈黙の艦隊 目覚めよ、ニューヨーク」、2027年夏配信」 — https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/2137727.html
  5. コミックナタリー「「空母いぶき」の新シリーズ「CHOKEPOINT」開幕」 — https://natalie.mu/comic/news/669578
  6. ビッグコミックBROS.NET「ビッグコミック第21号」 — https://bigcomicbros.net/magazines/92247/
  7. BOOK☆WALKER「沈黙の艦隊」 — https://bookwalker.jp/series/4502/
  8. BOOK☆WALKER「沈黙の艦隊 超合本版」 — https://bookwalker.jp/series/163061/
  9. BOOK☆WALKER「ジパング」 — https://bookwalker.jp/series/4446/
  10. BOOK☆WALKER「ジパング 超合本版」 — https://bookwalker.jp/series/163054/
  11. BOOK☆WALKER「ジパング 深蒼海流」 — https://bookwalker.jp/series/5191/
  12. BOOK☆WALKER「太陽の黙示録」 — https://bookwalker.jp/series/125798/
  13. BOOK☆WALKER「太陽の黙示録 第2部建国編」 — https://bookwalker.jp/series/411774/
  14. BOOK☆WALKER「空母いぶき」 — https://bookwalker.jp/series/125687/
  15. BOOK☆WALKER「空母いぶきGREAT GAME」 — https://bookwalker.jp/series/252865/
  16. Wikipedia「かわぐちかいじ」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/かわぐちかいじ
  17. Wikipedia「沈黙の艦隊」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/沈黙の艦隊
  18. Wikipedia「ジパング (漫画)」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/ジパング (漫画)
  19. Wikipedia「ジパング 深蒼海流」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/ジパング 深蒼海流
  20. Wikipedia「太陽の黙示録」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽の黙示録
  21. Wikipedia「空母いぶき」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/空母いぶき
  22. Wikipedia「生存 LifE」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/生存 LifE
  23. Wikipedia「僕はビートルズ」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/僕はビートルズ
  24. Wikipedia「アクター (漫画)」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/アクター (漫画)
  25. Wikipedia「黒い太陽」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/黒い太陽
  26. Wikipedia「戦場まんがシリーズ」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/戦場まんがシリーズ