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藤子不二雄Aの漫画をはじめて読むなら、まずは『笑ゥせぇるすまん』の1巻を開いてみましょう。一話完結なので、一話だけ読んで閉じてもかまいません。長い物語にじっくりつき合いたい人は、『まんが道』の1巻からです。今日選ぶのは、どちらか片方で十分です。
入口を二つ挙げたのには理由があります。『怪物くん』の連載が続いていた1968年に、同じ作者は大人向けの漫画へ進み、のちの『笑ゥせぇるすまん』につながる『黒ィせぇるすまん』を描き始めました。子どもが笑うキャラクターと、大人がぞっとする黒ずくめの男。その振れ幅がこの作者の面白さで、どの作品から入るかで作家の印象がまるで変わります。
はじめての人におすすめの読む順番
藤子不二雄Aの作品は、大きく三つの入口に分かれます。全部を順に追う必要はありません。今の気分に近いものを一つ選んでください。
| 入口 | 読むもの | 分量の目安 | こんな人に |
|---|---|---|---|
| 黒い笑い | 笑ゥせぇるすまん→帰ッテキタせぇるすまん→黒ベエ→魔太郎がくる!! | 5冊→2冊→3冊→14冊 | 一話ずつ読みたい人。忙しい人 |
| 青春 | まんが道→愛…しりそめし頃に… | 25冊→12冊 | 長編を読みたい人。漫画家の物語に惹かれる人 |
| 子ども向けの明るい話 | 怪物くん、忍者ハットリくん、プロゴルファー猿 | 21冊、4冊、22冊 | 暗い話を避けたい人。子どもと読みたい人 |
迷ったら、短くて終わりやすい黒い笑いをおすすめします。『笑ゥせぇるすまん』は全5冊で、どの話も一話で閉じます。続き物が苦手な人でも、途中で止めやすいのが助かります。
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「藤子不二雄」の本は、どちらの作品か
古い本を探すときに戸惑うのが名前です。藤子不二雄は、安孫子素雄と藤本弘の二人の名義でした。1987年に独立を発表し、1988年から安孫子さんは藤子不二雄Ⓐとして活動します。藤本さんの名義が、藤子・F・不二雄です。独立までは、合作も一人で描いた作品も、すべて「藤子不二雄」の名前で発表されていました。
つまり、表紙の名前だけでは誰が描いたか分かりません。『忍者ハットリくん』『怪物くん』『まんが道』は、藤子不二雄の名前で発表された安孫子さんの単独作です。一方の『オバケのQ太郎』は合作で、二人の合作は1976年の読み切りがほぼ最後でした。迷ったときの手がかりになるのは、小学館の藤子不二雄Aデジタルセレクションの公式サイトに並ぶ作品名です。合作も少し混じりますが、全215冊で藤子不二雄Aランドの全巻を含む、全集に近い顔ぶれです。
『笑ゥせぇるすまん』の周りを読む順番
『笑ゥせぇるすまん』は、喪黒福造というセールスマンが悩める人の願いをかなえ、約束を破った客に代償を負わせる物語です。もともとの題は『黒ィせぇるすまん』で、1968年の読み切りのあと、1969年から1971年まで『漫画サンデー』に連載されました。今の題に変わったのは、テレビアニメになったときです。1989年のアニメ化で知名度が大きく上がり、題名もそこで変わりました。
全5巻の中公文庫版は、1巻に『黒ィせぇるすまん』時代の話が入り、2巻から5巻が後年の連載分です。電子版もこの文庫版を電子化したものとされます。そのあとに読むのが続編の『帰ッテキタせぇるすまん』(全2冊)です。喪黒福造の弟が人助けをする『喪黒福次郎の仕事』は、兄の話に慣れた人が読むと、あべこべの可笑しさがあります。
同じ系統をもっと読みたいなら、『黒ベエ』(全3冊)へ進みましょう。公式サイトが「少年向けブラックユーモアの意欲作」と紹介する作品で、影を操る全身真っ黒な主人公が行く先々で人の運命に手を出します。短編が好きなら、画業60周年を記念して編まれた『藤子不二雄Aのブラックユーモア』(全2冊)も手頃です。2巻には青年向けの雑誌に載った作品が集められています。
『魔太郎がくる!!』は版で話が違う
『魔太郎がくる!!』は、いじめられっ子の浦見魔太郎が「うらみ念法」で復讐する、1972年から1975年の連載作です。この作品だけは、読む前に版のことを知っておいてください。
最初の秋田書店の単行本は、雑誌に載ったときとほぼ同じ内容でした。ところが、後に全集の『藤子不二雄ランド』を出すとき、社会情勢を考えて全133話のうち34話が大幅に描き直され、25話ほどが欠番になったとされます。オチごと変わった話もあります。デジタルセレクションの全14冊は藤子不二雄Aランドが底本なので、こちらの系統です。
つまり電子版は手軽ですが、連載当時そのままの形ではありません。当時の話まで追いたくなったら、古い単行本を探すことになります。いじめの場面がつらい人には、『ブラック商会 変奇郎』(全6冊)という手もあります。当時アシスタントだったえびはら武司さんは、『魔太郎がくる!!』から陰湿ないじめの部分を取り除いた作品だと語っています。ただし、こちらも恐喝を事業とする中学生の話で、明るい作品ではありません。
『まんが道』は43年の連作
『まんが道』は、漫画家を目指す満賀道雄と才野茂の物語です。満賀は安孫子さん、才野は藤本さんがモデルで、手塚治虫をはじめ当時の漫画家が実名で登場します。公式サイトは「連載期間43年に渡った」自伝的作品と紹介しています。物語の順番は次のとおりです。
| 編 | 掲載 | 描かれること |
|---|---|---|
| あすなろ編 | 週刊少年チャンピオン(1970〜1972年) | 二人の出会いから、宝塚の手塚治虫宅を訪ねるまで |
| 立志編・青雲編 | 週刊少年キング(1977〜1982年) | 手塚宅の訪問から、デビュー、上京、トキワ荘へ |
| 春雷編 | 藤子不二雄ランド(1986〜1988年) | キング編の最終回の続き |
| 愛…しりそめし頃に… | ビッグコミックオリジナル増刊(1989年と1990年の読み切りのあと、1995〜2013年に連載) | 少し大人になった満賀の青春 |
各編は掲載誌も年代も違いますが、物語は年代順に続いています。発表順と読む順番が同じなので、ここは迷いません。あすなろ編の終わりと立志編の始まりは手塚宅の訪問が重なるので、同じ話が二度出てきても落丁ではありません。『愛…しりそめし頃に…』は、漫画の表現もそれまでの少年誌向けから大人びたものに変わります。第2巻には、連載中に亡くなった藤子・F・不二雄について描いた「さらば友よ」が収録されています。二人の物語を読んできた人には、忘れがたい一編になるかもしれません。
ひとつ気をつけたいのは、これを史実の記録として読みすぎないことです。作者は「実話7割、フィクション3割」と語っていて、大幅に脚色された部分や、時代が前後して描かれた事件もあります。トキワ荘の歴史を知る資料というより、青春の物語として読むのがおすすめです。
どの版で読むか
版によって入っている編が違います。買う前に、春雷編が含まれるかを確かめましょう。
| 版 | 巻数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 藤子不二雄Aデジタルセレクション(電子) | 全25冊 | 藤子不二雄Aランド全23巻分と、「春雷編」全2巻分を収録しています |
| 中公文庫 | 全14巻 | 春雷編まで入ります。あすなろ編の終盤は立志編と重なるため割愛されています |
| 新装版 | 全10巻 | 春雷編まで入ります。2023年の発行で、雑誌掲載時のカラーページを収録しているとされます |
| 藤子不二雄Aランド(ブッキング) | 全23巻 | あすなろ編から青雲編までで、春雷編は入りません |
電子版で合わせて37冊と聞くと、長く感じるかもしれません。私なら、最初から全部を買うのはおすすめしません。まずは電子版の1巻だけ読んで、二人の少年が漫画に夢中になる勢いに乗れるかどうかで決めてください。
明るい作品から入りたいなら
怖い話が苦手なら、『怪物くん』か『忍者ハットリくん』から入りましょう。『忍者ハットリくん』の全4冊は短いので、一冊目として手に取りやすいはずです。1981年からの第2期にあたる『新 忍者ハットリくん』(全8冊)は、新しい設定で描かれています。『プロゴルファー猿』は全22冊と長めで、公式サイトは「少年漫画初のゴルフ漫画」と紹介しています。
もう一つ、入口の外に置いておきたい作品があります。『少年時代』(全5冊)は、昭和19年から終戦までの一年間を描いた長編で、柏原兵三の小説「長い道」を原作にしています。黒い笑いとも『まんが道』とも違う、静かな顔が見られます。
どの入口でも、最初に読むのは一冊だけで大丈夫です。今夜なら『笑ゥせぇるすまん』の一話からどうぞ。喪黒が笑って現れるところで、この作者の別の顔に会えます。
参考(2026年11月5日確認)
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション 公式サイト — https://fujiko-a.com/
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション「まんが道」 — https://fujiko-a.com/detail?key=man
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション「笑ゥせぇるすまん」 — https://fujiko-a.com/detail?key=lau
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション「黒ベエ」 — https://fujiko-a.com/detail?key=krb
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション「ブラック商会 変奇郎」 — https://fujiko-a.com/detail?key=hen
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション「少年時代」 — https://fujiko-a.com/detail?key=sho
- 藤子不二雄Aデジタルセレクション「プロゴルファー猿」 — https://fujiko-a.com/detail?key=sar
- BOOK☆WALKER「笑ゥせぇるすまん」 — https://bookwalker.jp/series/129495/
- BOOK☆WALKER「藤子不二雄Aのブラックユーモア」 — https://bookwalker.jp/series/126067/
- BOOK☆WALKER「まんが道」 — https://bookwalker.jp/series/129446/
- BOOK☆WALKER「愛…しりそめし頃に…」 — https://bookwalker.jp/series/125919/
- BOOK☆WALKER「魔太郎がくる!!」 — https://bookwalker.jp/series/129517/
- Wikipedia「藤子不二雄A」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/藤子不二雄A
- Wikipedia「まんが道」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/まんが道
- Wikipedia「笑ゥせぇるすまん」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/笑ゥせぇるすまん
- Wikipedia「魔太郎がくる!!」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/魔太郎がくる!!
- Wikipedia「藤子不二雄」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/藤子不二雄
- Wikipedia「忍者ハットリくん」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/忍者ハットリくん
- Wikipedia「黒ベエ」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/黒ベエ
- Wikipedia「ブラック商会変奇郎」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/ブラック商会変奇郎
- Wikipedia「藤子不二雄Aデジタルセレクション」 — https://ja.wikipedia.org/wiki/藤子不二雄Aデジタルセレクション